
127時間

おすすめ度
現在も登山家として活躍されているアーロン・ラルストン。
彼は2003年にアメリカのユタ州にあるブルー・ジョン・キャニオンという峡谷で事故にあいました。
事故から生還するまでのことを記した自伝「アーロン・ラルストン 奇跡の6日間アーロン氏がとった行動も含めて、かなり衝撃的な展開でした。
これが実話だというのだから、本当にアーロン氏の精神力はすごいです。
- 実話をもとにした映画が観たい
- 緊迫した展開を観てハラハラドキドキしたい
- 衝撃的な映像が観たい(グロを含む)
- 短い時間で内容の濃い映画が観たい
本記事では、作品情報を紹介した後、解説を交えながらレビューします。
目次
作品情報
ジャンル | ヒューマンドラマ |
製作年・上映時間 | 2010年・94分 |
原作 | アーロン・ラルストン著 「奇跡の6日間」 |
監督 | ダニー・ボイル |
主なキャスト (カッコ内は役名) | ジェームズ・フランコ (アーロン・ラルストン) |

(画像出典元:映画.com「ダニー・ボイル」
1994年に映画監督デビューし、2作目となる「トレインスポッティング」(96)が世界的にヒット。
代表作は「28日後・・・」(02)「スラムドッグ$ミリオネア」(08)「T2トレインスポッティング」(17)「イエスタディ」(19)があります。
ちなみに本作品では、アカデミー賞8部門で受賞した「スラムドッグ$ミリオネア」のスタッフが再集結しています。

(画像出典元:映画.com「ジェームズ・フランコ」
本作品で、アカデミー賞主演俳優賞に初ノミネートされています。
あらすじ(ネタバレ無し)
アメリカのユタ州中部にあるブルー・ジョン・キャニオンで、散策していたアーロン。
その道中で、道に迷っている2人の女性クリスティとミーガンと出会います。
アーロンが案内することを了承した彼女たちを引き連れて、3人で地下プールがある場所まで行きます。
プールに飛び込むのをアーロンのビデオカメラに収めながら楽しみつつ3人で遊びました。
遊び終えると、アーロンは出口まで2人を案内し、別れます。
再び1人になったアーロンは散策を再開。
峡谷が作り出している雄大な自然を肌で感じながら移動している途中、滑り落ちてしまいます。
着地した自分のそばに岩も落ちました。
気がつくと、自分の右腕が岩にはさまり抜けない状態に。
食料はわずかしかなく、水もペットボトル1本。
さて、これから彼はどうなっていくのでしょうか・・・。
(ネタバレ含む詳しいあらすじはMIHOシネマをお読みください。)
レビュー&解説(ネタバレあり)

観終えた後は少しぼう然としてしまいました。
それぐらい映像に引き込まれましたし、ジェームズ・フランコの演技の迫力もすごかったです。
加えて、ダニー・ボイル監督のメリハリのある画面づくりや演出が単調になりがちなシチュエーションを飽きることなく観続けられる要因の1つになっていると思います。
劇中最後にはアーロン・ラルストン本人も登場し、事故後も活動を続けていることがすごいと思いました。また、劇中の内容のほとんどが事実に基づいていることも驚きでした。
物語序盤について
オープニングは3つに画面を割り群衆を映し出すところから始まります。
アーロンが体験する孤独さとの対比となる構図になっており、いい導入になっていると思います。
キャニオンに行くための道具の準備をしている場面はその後の展開の暗示になっています。蛇口にしたたる水は、その後の水への渇望との対比です。
また、急いで道具を準備する中で、万能ツール(しっかりしたもの)が映りますが、手元を見ずに道具を探すため安物の万能ツールを手に取ります。
道具を大ざっばに準備している姿はアーロンの人物像を端的に表していると思います。
アーロンはビデオカメラも持ち出して、車の運転席や自転車からビデオ撮影します。
ライブ的な映像を記録するのは現代では一般的ですが、2003年当時は珍しいことでした。
このビデオカメラがあったことで、実際アーロン氏は生き延びるエネルギーをもらえましたし、事故の資料としても活用されることになります。
ビデオ撮影の習慣が功を奏す結果となりました。
物語中盤(事故)について
岩に右腕をはさまれてから、出てくる作品タイトル。
「あぁ、この危機的状況から彼の『127時間』が始まるのか」と改めて気づかされ、観ている私も絶望しました。
アーロン氏は4000メートル級の冬山を単独登山し、マラソン3セットをこなすほどの強靭な肉体を持っています。そんな彼であっても、腕は抜けないし、岩も動かない。
まずは、ロープを使って自分の体を支えることに挑戦します。
岩に引っ掛けようと何度もロープを投げる映像は実際のビデオカメラにも残されています。
ロープを使って自分の体を支えるのには理由があります。人がずっと立ち続けるのは拷問に近く、精神が参ってしまうからです。
「ロープが引っかかってくれて本当に助かった」と、のちにアーロン氏は述べています。
そして、腕を切断する場面の描写。
ナイフが神経に到達した時は、観ているこちらにもその痛さが伝わってくるようでした。
鬼気迫るジェームズ・フランコの演技もさることながら、効果音もとても効いていました。
アーロン氏の著書にも表現があるのですが、神経に触れた時は「極細のパスタのようであり、ギターの弦を全力で弾いてたような感覚」なのだそうです。
腕の切断シーンは観ているこちらも体に力が入ってしまいました。
物語終盤(救出)について
腕を切断した後も、課題はたくさんあります。
車のところまでたどり着かないといけませんし、喉の渇きも限界です。
このような様々な課題に対して、本当に奇跡のようなことの連続がありました。
- 岩場から抜け出たところに水たまりがあったこと
- オランダから旅行に来ていた一家に出会ったこと
- 捜索願いが家族から出されて救助隊が出動済みであったこと
アーロンの右腕は血液障害を起こしており腐敗が進んでいました。
切断があと45分遅れていたら、出血多量で臓器障害に陥っていたために命は助からなかったとされています。
また、救助ヘリコプターのかたの話によると、狭い峡谷から抜け出すことが30分ずれていたら、一家と会わなかっただろうし、捜索隊のヘリも見つけることができなかったそうです。
このようにいろんなタイミングが重なって、アーロン氏は助かることができたのです。
ちなみに、劇中で救助ヘリを操縦している人は、実際の救助の際にも携わっており「テリー・マーサー」という方です。定年数日前に映画撮影となっており、ちょうど最後の操縦になったそうです。
まとめ
本作品は、実話に基づいて事実をできる限り映像化した映画です。
また、ブルーレイに収録されている音声解説を聞くと、いろんなことが事実の通りに表現されていることが分かります。
例えば、ビデオカメラのメッセージ。特に終盤のメッセージは本人の言葉と同じものを言っています。
そして、右腕を切断している途中で見る幻覚。自分の子どもと遊ぶ場面をアーロン氏は見たそうです。
これらのことからアーロン氏の自伝的な映画として観ても良いレベルだと思います。
アーロン氏が最終的に生き延びてこられたのは、人とのつながりがもたらしたものです。
「人は独りでは生きられない」ということをアーロンの姿から感じさせられます。
明日への活力を得られる映画でもあり、おすすめです!