
「LION/ライオン 25年目のただいま」

おすすめ度
とても感動的な話でした。
題名の表す通り、家族と生き別れてしまった子どもが再会するまでをえがいた物語です。
実話を基にして作られています。
- 実話を基にした映画を観たい時
- 感動的な物語を観たい時
- 家族の絆を描いた物語を観たい時
本作品は、1人で観ても良いですし、カップルや家族で観ても良いです。
本記事の後半では、レビューと解説をしております。少しでも参考になりましたら嬉しいです。
作品情報
ジャンル | ヒューマンドラマ |
製作年・上映時間 | 2016年・119分 |
原作 | サルー・ブライアリー著 『25年目の「ただいま」 |
監督 | ガース・デイビス |
主なキャスト (カッコ内は役名) | デブ・パテル(サルー) ルーニー・マーラ(ルーシー) ニコール・キッドマン(スー) |
監督・キャスト

(画像引用元:映画.com「ガース・デイビス」)
本作が初の長編映画監督になります。
これからの作品に期待したいです。

(画像出典元:映画.com「デブ・パテル」)
テレビの俳優デビューが先ですが、映画「スリムドッグ$ミリオネア」(08)により映画デビューし主演を務めました。ニール・ブロムカンプ監督の映画「チャッピー」でも出演しています。
本作品でアカデミー助演男優賞に初ノミネートされました。

(画像出典元:映画.com「ニコール・キッドマン」)
ハリウッドを代表する女優さんですね。彼女が出ているだけで、画面が引き締まるような存在感があります。本作でもアカデミー助演女優賞にノミネートされています。
あらすじ(ネタバレ無し)

1986年のインドのある村から物語は始まります。
5歳の少年サルーは、兄のグドゥと一緒に石炭集めをしています。
父親の姿はなく、母親は石運びをして生計を立てていました。
決して裕福とはいえない暮らしでした。
ある時、兄のグドゥが夜中に仕事を探しに街まで行くことにします。
それを知ったサルーは「僕も行く。」と言いますが、断られます。
駄々をこねるサルーを前にして、仕方なくグドゥは連れていくことにします。
その後、二人は街の駅に着くのですが、真夜中なのでサルーは眠たくなってしまいました。
グドゥはサルーに駅のベンチで休んでおくように言い、「すぐに戻ってくるからね。」と仕事を探しに駅をあとにします。
サルーはうとうと寝てしまいます・・・。
しばらくして、ふと目が覚めたサルー。
真夜中の駅には誰の姿も見えません。
目の前に停まっていた電車に兄がいないかどうか探しに乗ります。
しばらく中を探しても、名前を呼んでも、兄は出てきません。
そうしているうちに、また眠たくなったのでサルーは電車の中で寝てしまいました。
電車はサルーを乗せたまま、出発してしまいます・・・。
レビュー(ネタバレあり)
5歳の少年サルーが兄とはぐれてしまい、どうなるのかドキドキしながら観ました。
治安が良いとは言えないインドで一人の少年が歩いているだけでいろんな心配をしてしまいます。
道中に出くわすストリートチルドレンや人さらいの様子は、インドの当時の現状を物語っているのだと思います。
劇中最後に出てきますが、インドでは年間8万人の子どもが行方不明になっているそうです。
その中でサルーが生き残って、家族と出会うことができたのは奇跡と言えるのではないでしょうか。
サルーが兄と離れてしまってからは、物語は長くサルーのみに焦点を当てて語られていきます。
そしてサルー自身がどのように生き残っていくのかを丁寧に映し出していきます。
サルーは兄とはぐれて路頭に迷う中で、ある一人の女性に出会います。
ご飯やジュースを振る舞ってくれますが、実は人身売買が目的でした。
異変に気づいたサルーが逃げた先にも人さらいが…。
あの手この手で生き延びていく様を見させられ、観ているこちらとしてはかわいそうになってきました。
孤児施設で保護されますが、そこでの生活も決して良いとはいえない状況。
運良くオーストラリアに住む養子として迎えられるところで、ようやく一息つける感じです。

そこから月日は流れて、サルーが大学進学する頃。
養子として引き取ってもらってから、何不自由なく過ごすことができ、サルーはすっかりオーストリアに染まっていました。
大学の知人の集まりでインド料理が振る舞われ、サルーはインドいじりされますが「おれはオーストラリア人だから。」と答えるほどです。
しかし、そこで目にする故郷の菓子。幼いころに食べたかったお菓子。
ここから、しばらく見せなかったインドの記憶や回想が映像として少しずつ入ってきます。
故郷に対する思いが膨らむサルーの様子を上手に表現しているなと思いました。ガース・デイビス監督、映像の使い方が上手です。
サルーが養母であるスーに故郷を探していること、故郷に行くことを打ち明けたところは、サルーとスーのお互いに対する愛情の深さをとても感じました。
その中で特に印象に残っている言葉があります。
スーの「子どもが産まれることで世界が良くなるのだろうか。恵まれない子を助けることに意義がある」という言葉。
インドの孤児施設の現状を知っているスーだからこそ出てくる言葉なのだろうと思います。
この言葉に私はとても心を打たれました。
スーの慈悲深さによって実際に孤児施設を離れ、人生を変えることができていたからです。
ちなみにスー演じるニコール・キッドマン自身も養子を迎えています。

さて、題名が示す通りエンディングでは無事に母親と再会します。
そこで分かる真実もなかなかの衝撃でした。そして、題名の意味も明らかになります。終始、画面に釘付けになる映画でした。
とてもおすすめです。
解説
ここからは、本作品に出てくる物について解説します。
私が鑑賞して気になったことです。
インドは欧米と比べるとなじみが少ないと思います。インドの文化や状況を知ることで、作品がより身近になるので知って損はないです。
以下の4つのことを解説します。
- なぜ子どもの誘拐やストリートチルドレンが多いの?
- 少年サルーが人さらいから逃げた後に見かける修行僧みたいな人は何者?
- サルーの故郷のお菓子は何?
- 川にうかんでいるオレンジ色の物体の正体は?
順に解説します。
なぜ子どもの誘拐やストリートチルドレンが多いの?
インドは人口も多く、貧困の差が激しいです。特に貧しい地域では、安い労働力として子どもが必要としています。犯罪組織が人身取引のために誘拐するのです。
また、家族で豊かに暮らそうと都市部に出たとしても、親が失業してしまうケースがあります。その時に、親が子どもを手放すといった悲しいことが起きてしまう。そういうわけで、ストリートチルドレンも都市部に多いです。
少年サルーが人さらいから逃げた後に見かける修行僧みたいな人は何者?

ヒンドゥー教の修行者です。中でも「サドゥー」と呼ばれる人たちで、自分たちに苦行をあえて課します。苦行のスタイルは様々です。断食したり、ひたすら片足で立ったり、横になって転がり続けたりした人もいたそうです。
髪は切らずに、ひげも伸ばしているのが特徴です。額のマークは所属する宗派を表しています。
インド全域やネパールに400万人から500万人いるとされてます。
苦行を課して耐えていることから、ヒンドゥー教の中でも重要な位置にいます。
生計は周りの人から分け与えてもらうことで成り立っているサドゥーがほとんどです。
驚くことには、サドゥーは法的には死亡者とされています。
まさに世捨て人ですね。
家庭内の不和や借金などを理由にサドゥーになろうとする若者がわりといるらしいです。
参考記事:Wikipedia「サドゥー」
サルーの故郷のお菓子は何?

「ジャレビ」というお菓子です。
小麦粉と水を混ぜた生地を円環状に揚げたもので、砂糖のシロップ漬けにしたものです。
サクッとした食感の後に、甘いシロップが口の中に広がって、ものすごく甘いそうです。
一度は食べてみたいですね。
参考記事:「旅するパティシエ 旅する本屋」
川にうかんでいるオレンジ色の物体の正体は?

結論から言うとマリーゴールドの花です。ヒンドゥー教では縁起のいい花とされています。
インドではこの花を神仏へのお供えや儀式、お祭りなど、とにかくよく使います。
寺院への参拝には必ず持っていきます。インドでは多数の寺院があるため、マリーゴールドの花もかなりの数が必要になります。
一方で、使い終えた花は燃やして処分するわけにはいきません。
なぜなら、神仏へのお供えに使うほど神聖なものとされているからです。
だからインドの人たちは川へと流します。
このようにして、大量のマリーゴールドの花が川に浮かんでいるわけです。
参考記事:TABI LABO『インドのガンジス川がいま、「腐った花」で大変なことになっている』
まとめ
実話を基にした物語。
結末は当然予想できますが、そこまでの過程は目を離せないぐらい惹きつけられます。
サルーがどんな状況であっても生き延びて家族に再会できたのは、運の強さもあると思いますが、心の「たくましさ」もあったからだと思いました。
少年サルーの姿に私はとても刺激を受けました。おすすめの一作です。ぜひご覧ください。
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