
運び屋

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ニューヨーク・タイムズ紙が2014年に発表した記事「The Sinaloa Cartel's 90-Year-Old Drug Mule」(訳:シナロア・カルテルの90歳の麻薬運び屋)から着想を得て作られた本作品。
映画は、主人公アールが麻薬の運び屋をしながら家族との関係性について見つめ直す物語でした。
「人生の特等席」(12)以来となる90歳近いクリント・イーストウッドの演技にも注目です。
彼の放つ言葉の数々はとても深みがあります。
クリント・イーストウッドは本作品のインタビューにおいて「この映画で伝えたいことは『学ぶことに年齢は関係ない』ということ。」と述べています。
エンディング曲もそのことがよく伝わる歌詞で、本作のために提供されたものです。
- クリント・イーストウッド主演の映画が観たい時
- 実話を基にした映画を観たい時
- よくよく考えたら家族との時間がなおざりになっている時
本記事では、作品情報・あらすじに加えて、劇中に登場する花「デイリリー」と物語との関係性について解説をします。
作品情報
ジャンル | ヒューマンドラマ クライムサスペンス |
製作年・上映時間 | 2018年・116分 |
監督 | クリント・イーストウッド |
主なキャスト (カッコ内は役名) | クリント・イーストウッド(アール・ストーン) ブラッドリー・クーパー(コリン・ベイツ捜査官) ローレンス・フィッシュバーン(主任捜査官) マイケル・ペーニャ(トレビノ捜査官) ダイアン・ウィースト(メアリー) アリソン・イーストウッド(アイリス) |
なかなか豪華なキャストです。

(画像出典元:映画.com「ブラッドリー・クーパー」
ブラッドリー・クーパーはイーストウッド監督作「アメリカン・スナイパー」(14)で主演をしました。

(画像出典元:映画.com「ダイアン・ウィースト」
ティム・バートン監督作「シザーハンズ」(90)で私は知りました。クリント・イーストウッド同様に、かなり年を重ねても映画に出演しているのはすごいなと思います。
彼女の力強さと温かさを兼ね備えた演技は今作でも健在です。

(画像出典元:映画.com「アリソン・イーストウッド」
クリント・イーストウッドの娘さんです。1980年(当時8歳)にイーストウッド監督作「ブロンコ・ビリー」で映画初出演しました。今作では、劇中でも親子を演じています。
あらすじ(ネタバレ無し)
園芸家として仕事一筋であったアール・ストーン。
彼の育てるデイリリーはかつて人気が高かったが、ネット販売の台頭により売り上げは下がっていった。
ついには自宅も差し押さえとなり、行く宛もなくなってしまう。
元妻のいる娘夫婦の所に行くが、家族をないがしろにしてきたため、門前払いを食らってしまう。
ちょうどその時、「車の運転さえすればいい。」と仕事を持ちかけられ引き受けることに。
ある荷物を目的地まで運ぶだけで現金がもらえるのだが、その荷物の中身は麻薬であった…。
(ネタバレ含む詳しいあらすじはMIHOシネマをご覧ください。)
感想&解説
仕事を何より優先し、家族の記念日すら二の次にしてしまうアールの行動は、たしかに家族に嫌われても仕方ないと思いました。
妻への愛に改めて気づいた時にはすでに遅く、娘との関係を修復できたのも遅かった。
アールが最後に家族へ言った「何でも買えたが、時間だけは買えなかった。」という言葉はとても胸に響きました。
また、妻との記念日を忘れてしまったベイツ捜査官に対して言ったアールの言葉も含蓄あるものでした。
年を重ねたクリント・イーストウッドだからこそ、より重みのある言葉として伝わってきます。
「家族との時間を大切にしよう」と改めて考えさせてくれる話でした。
デイリリーについて
さて、今作でとても印象的な花「デイリリー」について解説します。
知っておくことで、物語の見方が深まります。劇中でも言及されているが、デイリリーは1日しか咲かない花。ユリ科に近い花であることから、1日→デイ、ユリ→リリーから名前がつけられている。
別名:黄金の星ともいわれている。
- 愛の忘却
- 憂鬱が去る
- 苦しみからの解放
家族をないがしろにして、デイリリーの栽培に努めています。その象徴ともいえます。
一方で、「憂鬱がさる」「苦しみからの解放」という意味に注目すると、物語終盤の心情と重なります。
最後の刑務所の場面でも、デイリリーを育てています。
妻への愛も再確認でき、夫として最後に言葉をかけることもできました。また、娘との関係も修復できました。
たしかに家族と過ごす時間は短かったですが、ずっと感じていた家族への後ろめたさから解放されたことを象徴しているのだと思います。
おまけ
ニューヨーク・タイムズ紙のサイトでは、本作の基になった運び屋レオ・シャープ氏が逮捕される時の映像を観ることができます。
マイケル・ペーニャ出演のエンド・オブ・ウォッチが観たくなります。