
実話を基にした映画「ウインド・リバー」

実話の事件を基にしたサスペンス映画である本作品。
この記事では、物語の核心に迫ることに関してネタバレなしで紹介していきます。
鑑賞前に知っておくと、より物語が理解しやすくなるポイントも解説しております。
少しでもお役に立てましたら嬉しいです。
目次
監督・脚本・主要なキャスト
テイラー・シェリダン

監督・脚本を務めるのは映画「ボーダーライン」の脚本を務めたテイラー・シェリダン。本作品が初監督となります。ボーダーラインは、メキシコ麻薬戦争を題材にしており、闇の部分にスポットライトを当てた作品でした。今作も、アメリカに今なお残る闇の部分にスポットライトを当てた作品となっています。
- ジェレミー・レナー(コリー・ランバート)
- エリザベス・オルセン(ジェーン・バナー)

(画像出典元:映画.com ウインド・リバー:フォトギャラリー)
ジェレミー・レナーとエリザベス・オルセンは「アベンジャーズ」シリーズでも共演しています。
あらすじ
ワイオミング州内のインディアン保留地とされているウィンド・リバー。雪原地帯で狩りをしているコリー・ランバートは、道中で女性の遺体を発見します。
地元警察からの連絡により、FBIの新人捜査官であるジェーン・バナーが現地に派遣されます。
しかし、不安定な気候に加え、慣れない雪山の捜査のため一人では上手くいかない・・・。
そこで、遺体の第一発見者である地元ハンターのコリー・ランバートに協力を求めます。
殺人と思われるこの事件の真相とは・・・。
(上映時間:110分 2017年製作)
レビュー
おすすめ度
本作品はプライムビデオなどでも高評価でした。
舞台が雪山なので映像のメリハリがつきにくいところが難点ですが、それを上回るほどの物語の構成や演出が巧いです。
監督の手腕の高さを感じました。
本作品は、新米FBI捜査官ジェーン・バナー が慣れない雪山や文化の土地において、周囲の人々と関り合いながら物語が進行していきます。
視聴者側は、女性の遺体があるのは確かだけど、一体どんなことが起きたのか・・・。彼女と共に考え、徐々に明らかになっていくミステリー要素も含んだ構成になっていました。
真相が明らかになる場面の見せ方が本当に上手で、一気に引き込まれました。
そして、そこからのクライマックス。目が離せませんでした。
また、キャストの方々の演技が本当に素晴らしかったです。中でも、ジェレミー・レナーとジル・バーミンガム。

この二人が出ているシーンはどれも味わい深いです。
物語をより理解できる4つの知識
ここからは、本作品をより理解できるようになるための4つのポイントを紹介します。
本作品は、アメリカの歴史的背景や警察の仕組みなどを知ることでより深く理解することができます。
鑑賞前に読んでいただき、少しでもお役に立てましたら嬉しいです。
鑑賞後であっても、作品に対する理解が深まるものになっていれば幸いです。
インディアン保留地とは

インディアンとは、イギリス側から見たアメリカ大陸先住民の呼び名です。
かの有名な冒険家コロンブスが「ヨーロッパの西にはインドがあるはずだ」と出航し、発見したアメリカ大陸をインドと勘違いしたのは有名な話です。
そして、アメリカ大陸に元々いた先住民はインディアンと呼ばれました。(現在ではネイティブ・アメリカンと呼ぶ)
その後、イギリスからやってきた白人たちの植民地化により、インディアンは土地を追いやられます。良い土地ほど価値があるわけですから、追いやられた先は当然あまり良い土地ではありません。その追いやられてしまった土地が保留地となっています。
保留地はアメリカの全土にあり、100か所以上あります。ウインド・リバーもその一つです。
現在も、ほどんどの保留地では産業が持てず、貧しい暮らしをしています。失業率は半分以上で、アルコール依存率も高いそうです。
アラパホ族

インディアン部族の一つにアラパホ族があります。
ウインド・リバーがあるワイオミング州では、約3000人のアラパホ族が住んでおり、自治が認められています。
参考記事:Wikipedia「アラパホ」
逆さ国旗

国旗を逆さまにして掲揚することは、その国に敬意を払っていないことの表れです。
インディアン保留地では、白人達によって自分たちの土地を奪われ、まともに生活ができない苦しさがあります。
当然、白人たちに好意を示さない人たちもいることでしょう。
アメリカの警察組織(FBI、BIA、部族警察)

アメリカは各自治体で保安します。
例えば、ロサンゼルス市で犯罪が起これば、ロサンゼルス市警の管轄です。それよりも広い範囲であれば、カリフォルニア州警察の管轄になります。
市や州をまたいでしまうと、警察は手が出せなくなってしまいます。そこでFBI (連邦捜査局) の登場です。
FBIは、連邦政府つまり国の警察です。州をまたいだ犯罪や連邦政府が管理する地域についてはFBIの管轄になります。
インディアン保留地は連邦政府が管理しているのでFBIの管轄となります。ただ、ウインド・リバーは部族による自治が認められているので「部族警察」という組織も存在します。
部族警察の上の組織としてBIA「インディアン管理局」があります。これは、白人により組織されたものです。
さて、本作品では、女性の遺体が発見されたことにより、FBIから新人捜査官が派遣されます。
遺体が殺人事件のものであるかを調べるためです。
殺人事件と立証されれば、応援を要請できます。しかし、立証されなければ応援は要請できず、一人で調査を進めなければなりません。
まとめ
上記の4つのポイントを知っておくことで、物語の理解が少しでも深まるものとなれば嬉しいです。
最後に、
テイラー・シェリダン監督は「この作品は成功しようが失敗しようが、作らなければならない作品だった。」と話しています。ネイティブ・アメリカンの友人から保留地の実情を聞き、そう思い立ったそうです。
アメリカに今なお残る闇の部分。娘を持つ父親としては、胸が痛くなるような話でした。
しかし、表にはあまり出ない実情を知る一つのきっかけとなる貴重な映画作品です。
一度は見ておくことをおすすめします。